今まで殆ど行われていなかった地中における電磁波の環境測定と、そこでの伝搬特性を調べる事を目的として、本学構内に直径10cm深さ100mの坑井を構築し、そこに挿入するセンサー類と、検出された自然界の電磁波動の状況をモニターするための信号解析及び表示装置の開発を続けてきた。 電界センサーを坑井内に挿入し、地中の電磁波を測定する場合に必要となるのが地中におけるセンサーのインピーダンス(交流抵抗)である。これを調べるためには、予めセンサーの構造に依存した電気的特性のデータを取得しておく必要がある。そして地中での測定時にその電気的特性を含めた計算により、そのインピーダンスを算出するのである。これらの測定のために、本補助金で購入した装置(FFTサーボアナライザー)とコンピュータを接続させ、特性データの取得、実時間でのセンサーインピーダンスの測定およびその算出までの一貫したプログラム・システムを完成させた。この成果については、所属研究所の所報で報告している。現在、それを用いての測定実験の準備を行っている段階である。 これらセンサーの開発と並行して、地中における電磁波環境の定性的測定実験を行ってきた。特に、地中特有の電磁波動を確認するために、同種のセンサーを地上にも設置して比較測定を続けきた。その結果、様々な興味ある結果が得られた。それらについてはもう一方の所報で紹介している。 一方、特殊な波動磁界測定装置(サーチコイル)を用いて地中深さ依存性の測定を行ったところ、地中特有の減衰特性を確認する事ができた。この結果は導体における「電磁波の表皮厚さ」の考え方は地中における電磁波に対しては適用不可であるという確証を与える事になった。 このように得られた多くの新たな知見について、現在論文を執筆中である。
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