今まで殆ど未知に近い状況であった、地中における電磁波の環境及びその励起・伝搬機構の解明を目的とし、又、地中内部の力学的エネルギーとの関係を明らかにする事を目指して、本学構内に特殊な坑井を構築し、開発したセンサーを用い、観測を続けてきた。データ取得及び解析プログラムを駆使して解析を行ってきた結果、この2年間で次のような多くの成果を得ることが出来た。 (1)地中および地上で同時に観測した強い電界パルス群の検出により、これら電界パルス群は地球に起源を持つ事が明らかになった。 (2)「平成12年7月から10月にかけて北陸から西のプレートが東に1cmも移動した」事が国土地理院により発表された。これは本学で検出していた地中起源の電界パルス群の観測期間と一致しており、両者の発生状況が極めて良い一致をしており、本観測方式の有用性を示唆している。 (3)地中媒質の電気的パラメータを測定する方法を開発し、その測定と同時に、背景の電界雑音強度の深さ依存性との関係を明らかにした。その結果媒質の深さに伴う誘電率の増加と、電界雑音も増加している事を明らかにした。 (4)「地球起源の電界雑音は誘電率の高い岩盤層内を、それ程減衰することなく伝搬している可能性がある」という極めて興味深い結論に近づいている。 これらの成果は、今後10年間の太陽地球系科学および固体地球電磁気学の優先研究計画を策定するための、「地球電磁気学将来計画シンポジウム」(3月)で発表し、本研究の重要性とその推進を訴えた。 また5月に行われる「地球惑星科学関連学会合同大会」及び8月にオランダで開催される「国際電波科学連合」の総会でも発表する予定である。
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