平成12年度に局所経頭蓋連続磁気刺激(rTMS)をパーキンソン症候群7名に施行し、第1次運動野における短母指外転筋の運動誘発電位(MEP)の変化や、症状の変化について確認した。平成13年度はパーキンソン病19名と対象者数を増やして検討を行った。対象は19名のパーキンソン病で男性10名、女性9名で平均年齢62.8±11.0歳である。Hoehn-Yahr重症度分類では、stageIIが5名、stageIIIが11名、stageIVが3名である。方法は、被検者を安静座位にさせ、症状の強い側の短母指外転筋に記録電極を設置させ、安静時のmotor thresholdを測定した。120%motor thresholdの刺激強度にて8の字コイルを用いて、prefrontal領域に0.3Hzの頻度で30回のrTMSを行った。rTMSの前後において短母指外転筋におけるMEPのcortical mappingを行い、その変化について検討した。結果では、19症例中13症例にて、rTMS後のMEPの振幅において増大がみられ、中には、得られたMEPのmappingでのareaの拡大を認めたものもあった。MEPの振幅の総和におけるrTMS前後での差において、振幅の低下がみられたものは6症例あった。その中の3症例では、短母指外転筋におけるMEPのmotor thresholdの低下を呈し、皮質における興奮性に変化をきたした可能性がある。臨床症状としては、自覚的に固縮の改善や運動遂行のスムーズさがみられた。以上より、prefrontal領域における局所的なrTMSは、第1次運動野への促通効果あるいは興奮性の上昇の傾向があると推測された。
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