磁気刺激法を用いて、臨床的にジストニアの成因と治療を研究し、さらに経頭蓋磁気刺激の大脳への作用機序についてラットを用いて、その影響を行動学的と神経生化学的に検討した。 頸部局所ジストニアを対象として、ジストニアの責任筋の一つである胸鎮乳突筋を支配している副神経を磁気で刺激すると、ジストニア側の刺激で大脳感覚誘発電位(SEP)の振幅が正常側の刺激での振幅より高かった。ジストニア側副神経に神経ブロックをすると、SEP振幅は減少し、この時筋力の著明な低下はなくジストニアは軽減した。この観察からジストニアには運動出力の異常だけでなく、筋からの感覚系の抑制での異常が推測された。 磁気刺激はパルス状に変化する磁場により渦電流を発生させ、この渦電流はニューロンを刺激する。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を行うと、大脳皮質機能を変化させることが分かってきた。rTMSは種々の神経・精神疾患に対して応用されつつある。今回wistar系雄性ラット前頭部にrTMS(25Hz、x125)を与えて行動学的変化と神経化学的検討を行った。Elevated plus-maze testでは、ラットの総行動回数にはrTMSを受けた群、音だけのsham群、control群間には差がなかった。しかし解放されたアーム(open arm)での滞在時間は増加した。これはTMS機の出力40%と60%で刺激した時に観察したが、20%、80%には認められなかった。3日間刺激では認められるが、1日では認めなかった。in vivo microdialysisではrTMSにより前頭部の5-HT濃度での抑制が認められた。Dopamineには変化がみられなかった。
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