今年度は、(1)2頭のサルに対する訓練と手指機能パフォーマンス・テストの検討を行い、(2)1頭のサルで実験的に大脳一次運動野に障害を作り片麻痺の症状観察を行いさらに回復過程での上記テストの有用性を調べた。 (1)日本サル2頭について、以下の訓練を行った。テストは直径30mm、深さ10mm、20mm、30mm、40mm、50mmの円柱状の穴に1cm角の大きさのリンゴを入れて眼前に提示してそれをとるようテストを12回連日行い、最後の4日間でサルの手指が穴に入っている時間を測定した。結果は、深さ10mmでは0.79±0.17sec、20mmは0.98±0.27sec、30mmは0.93±0.33sec、40mmは1.13±0.44sec、50mmは2.29±0.55secであった。深さが徐々に増加するにつれ、所要時間が大きくなり、50mmが他の深さのものに比べ最も時間を要した(p<0.01)。なお、利き手は1頭は右、孟1頭は左であった。(2)(1)のうちの1頭のサル(左利き)にGOFとネンブタール麻酔下で右第一次運動野をマッピングし、通電により左上肢の領域に障害を作った。障害直後の手指機能パフォーマンス・テストの結果は、障害の翌日左上肢の麻痺が認められた。術後1週間は、非麻痺側の右手で行い、10日目より麻痺の改善とともに利き手である麻痺側(左)を使用するようになった。約3週目にはテストの所要時間については障害前と差は認められなくなったが、軽度の病的協同運動が残存していた。今回の結果より、我々が用いた手指機能パフォーマンス・テストが有用であることが確認された。
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