研究概要 |
今年度は、(1)サル大脳皮質第一次運動野の上肢領域を皮質内微小刺激によってマッピング、(2)手指領域に実験的脳梗塞を作成し,手指の麻痺の状態,機能回復過程を観察した.まず、手術前に前年度と同様の手指機能パフォーマンス・テストを用いて利き手を確認した. (1)GOFとネンブタール麻酔下で開頭し優位半球の第一次運動野(A12 L18)に微小電極を用いて100-150μA(0.2ms, 300Hz, 11cathodal pulse)にて200μmごとに刺激し,マッピングを行った。その結果、中心溝の吻側に内側から外側にかけて,三角筋(肩領域)、手の回内回外(手領域),手指の屈曲,伸展(手指領域)の順序で筋収縮が観察された.手指領域は,運動野の内側から外側にかけて第5指から4,3,2指の屈曲、伸展が順に誘発された.これらの結果は,従来の運動野の上肢領域の体部位局在に一致していた.(2)マッピング終了後,手指領域に実験的障害部位を作成した.前年度と同様の手指機能パフォーマンス・テストを用いて,障害後の上肢の機能評価を行った.術後翌日に対側上肢に麻痺を認め,術後2日間は麻痺側(左手)を使って行うことはなかった.術後3日目より麻痺側も使うようになったが,手関節から手指関節にかけての障害が残存し,エサの把持は不可能で失敗することが多かった.また,肘関節の屈曲や伸展運動をうまく利用し,指先の位置をずらしてつまむ動作を助けるといった代償的な運動がみられていた.その後,徐々に手指の機能が回復し,術後1週間では麻痺側でエサを取ったが,時間を要していた.術後1カ月でほぼ麻痺は回復し,代償運動も少なくなりテストも術前と変わらない成績であった.今回の結果から,麻痺の回復過程は昨年度の1例とほぼ同様であり,また,障害部位を補う代償運動が確認された.
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