研究概要 |
立位時における外乱に対する姿勢制御および低摩擦床面からの歩行開始動作における姿勢制御に関しての研究を行い,以下のような結果を得た. 1.立位時における姿勢制御 (1)転倒予防という観点からフレアヒール(以下,FH)を取り付けた靴を履かせ,後方傾斜刺激に対しFHの幅が立位の安定性に如何に影響するのかを検討した.その結果,高齢者と片麻痺患者は健常者と比較して有意に後方傾斜角度が減少した(p<0.01).また,対象内での比較では幅の大きなFHを使用したときに後方傾斜角度が増加傾向を示したが,幅が1.0cm以上のFHでは後方傾斜角度の増加率は減少傾向を示した.高齢者や片麻痺患者のように平衡機能能力低下が窺える者にとってフレアヒールは転倒予防に有用であろうと考える. (2)立位時に水平移動刺激を加え足圧中心移動を観察することにより,姿勢制御能の評価が可能であることが示唆された. 2.低摩擦床面からの歩行開始動作における姿勢制御 高摩擦床面と低摩擦床面において歩行開始1歩目の動作を,1枚のフォースプレートと動作解析システムを用いて測定した.その結果,1歩目の歩幅と遊脚肢の踵接地時から足底接地時までの時間差は,低摩擦床面では高摩擦床面の場合よりも有意に減少し,遊脚肢の外果と床面との最大垂直距離は低摩擦床面では高摩擦床面の場合よりも有意に増加していた.これらの知見から,低摩擦床面における歩行開始1歩目の動作は,歩幅を減少させ、足部を高く上げ、踵接地時はフットフラットになるようにコントロールされることが示唆された。
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