研究概要 |
当初,予定していた頭蓋内圧トランスデューサーは硬膜外式であったが,不安定のため脳内での測定が可能なものに変更して,実験を行った. 【方法】雑種成犬20頭を用い,脳出血モデルを15頭作製し,頭蓋内圧亢進を来した10頭を頭蓋内圧高度亢進群(H群:平均33mmHg)5頭と頭蓋内圧亢進群(M群:平均20mmHg)5頭に群別し,可動域訓練(前肢屈伸,後肢屈伸,体幹回旋と体幹屈曲)と姿勢変換(固定台傾斜角度0度→30度→60度→0度)時の平均動脈圧(以下MAP),頭蓋内圧(以下ICP)と脳潅流圧(以下CPP)の変化をコントロール群(sham-operated)5頭と比較した. 【結果】-可動域訓練 前肢では,MAPは全群とも100から110mmHgで推移し,有意差は無かった.ICPは,H群が施行中5mmHg増加し,他群に比べ有意(P<0.01)に変化していた.CPPは,H群でのみ低下する傾向があり,施行中7.3mmHg低下し65mmHgになっていたが,有意ではなかった.後肢ではいずれも有意な結果は認められなかった.体幹の回旋では,MAPは特に変化無く,ICPがH群で8.2mmHg上昇し有意(P<0.01)であった.CPPは,有意ではなかったが,H群で6.5mmHg低下し,56.8mmHgとなり4可動域訓練中では最低値を示した.体幹の屈曲では,MAPとICPが施行中に上昇する傾向があった.CPPでは,ほとんど変化がみられなかった. -姿勢変換 姿勢変換では,MAPは3群とも台の挙上と共に漸減し,0度に復帰するとほぼ前値に戻るという同様の推移を示した.ICPではC群とM群において台の傾斜が強くなるのに従い低下がみられ,0度に戻すと前値にもどる傾向があったのに対し,H群では,0度に戻してもICPは前値より高くなった.CPPでは,60度挙上後0度に復帰させても改善不良で低値のままであった.また,60度では他の傾斜角度に比し有意にCPPの低下(P<0.05)を認めたが,群間では有意差は無かった. 【結論】今回の実験からは,30mmHg以上の頭蓋内圧亢進では,頭蓋内圧をさらに亢進させ脳循環を低下させる可能性があるため,可動域訓練やギャッジアップは慎重に対処すべきであることが可能性として示唆された.20-25mmHg以下の頭蓋内圧亢進では,特に問題となるような所見は認められなかった.
|