研究概要 |
対象は9週齢のウィスター系雄ラット3匹(体重260g〜285g)を用いた.エーテル麻酔した後,皮製のジャケットを装着させ右後肢を股関節最大伸展位,膝関節最大屈曲位,足関節最大底屈位で骨盤帯から足関節遠位部までギプス固定し,足関節遠位部から足趾までは浮腫の有無を確認するために露出させた.また,左後肢は自由とした.固定期間は先行研究を参考に関節拘縮を作製できる2週間とし,伸展制限(25°〜30°)を認める膝関節の屈曲拘縮モデルラットを作製し,関節の組織を観察した. 滑膜において,対照群に比べ固定群では滑膜細胞の萎縮と消失,脂肪細胞の萎縮,滑膜下層の線維増生,微小血管の拡張とうっ血を認めた.膝蓋靭帯と脛骨間の滑膜は2〜3層の滑膜細胞が脂肪組織を覆う脂肪性滑膜であり,対照群に比べ固定群では滑膜細胞の萎縮,脂肪細胞の萎縮,滑膜下層の線維増生,微小血管の拡張とうっ血を認めた.関節腔へ向かって舌状に突出する滑膜は1〜2層の滑膜細胞が線維脂肪性結合組織を覆う線維脂肪性滑膜であり,対照群に比べ固定群では滑膜細胞の萎縮,脂肪細胞の萎縮,滑膜下層の線維増生,微小血管の拡張とうっ血を認めた. 関節包は厚さが減少し,弾性線維は減少していた. 軟骨は関節軟骨表層に紡錘型細胞の増生が観察され,線維芽細胞の増生と思われた. 以上のことから,関節機能という視点では,拘縮モデルは廃用と同義と見なすことが可能であり,滑膜細胞が関節機能に果たす役割の重要性から見て,この滑膜細胞の萎縮,消失を一種の廃用性萎縮とみなしうるかもしれない.
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