部分脱神経筋の神経および筋の回復機序については未だ不明な点が多い。部分脱神経の作製にも多くの疑問点があり、その結果は一致しない。さらに今までの多くの報告では、神経筋接合部分での観察であり、神経および筋自体の病態像を捉えたものでは無い。本実験での部分脱神経筋は、第5腰髄神経節を切離し、恒常的な部分脱神経筋を作製した。部分脱神経をおこした神経の本幹部分での観察及びヒラメ筋の筋湿重量、筋繊維横断面積、筋繊維のタイプ分類を調べた。さらにこのような部分脱神経ラットを後肢懸垂をし、無負荷の状態での神経筋の観察もおこなった。坐骨神経本幹部分での髄鞘内横断面積は部分脱神経において4週、6週、8週で対照群と比較して有意に増大していることが判明した。筋湿重量では対照群に比較し減少を認めた。組織化学的検索では残存した正常な筋群の代償的肥大と神経再支配をおこしてはいるが、全体的に萎縮を示しおり、左方偏位と右偏位の二つの集団が認められた。また発芽による再支配を受けたヒラメ筋の筋線維が回復する経緯では、タイプII線維の比率が上昇することも解った。このように部分脱神経の回復機序は、まず廃用性筋萎縮と神経再支配を受けた筋の回復が起こり、次ぎに6週まで脱神経であった筋群の回復がおこることが判明した。さらにラットの後肢懸垂により、無負荷の状態では先程の実験と違い、廃用性の要素が大きく左右することが推定された。今後は逆に負荷をかけ脱神経の神経と筋の病態像を探る必要がある。
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