研究概要 |
本年度は,感覚・運動連関,認知機能との関連の基礎的研究を中心に行った. (1)体性感覚と筋感覚との関連:運動に関連する感覚情報の誘発脳波上への影響について体性感覚誘発脳電位(SEP)を用いて研究し成果を得た.運動中の感覚情報処理が正しくなされているかは運動機能回復において重要な要素となる.運動には目的筋の運動以外にも体幹に近い筋肉の運動が加わり脳に到達する感覚情報は複雑であり,単純な脳波SEPの成分に複雑な筋固有感覚が混入するかどうかは不明であった.研究では,SEP記録には中枢側にある筋知覚の影響はほとんど無いことを明らかにし,運動中の感覚反応の理解について重要な知見を報告した(Hoshiyama et al.Clin Neurophysiol,111:1607-1610,2000). (2)経皮的電気神経刺激法(TENS)と痛み関連脳反応:機能回復訓練の妨げとなる慢性痛の治療法としてのTENSが,脳反応に対しどのような影響を与えているか脳波および脳磁図を用いて明らかにした.TENSは大脳皮質由来の反応には大きな変化を与えず,皮質下反応へ変化を与える可能性があることが示唆された(Hoshiyama et al.Clin Neurophysiol,111:717-724,2000). (3)その他の研究成果として,脳での感覚処理における時間分解能力に着目した新しい評価方法の報告(Hoshiyama et al.Clinical Neurophysiology, in press,2001)は運動,感覚に関する脳病態の解明に新しい方法を提供する可能性が高い.また,脳認知過程の最初の反応部位を「音の想起」に関して明らかにした報告(Hoshiyama et al.NeuroReport, in press,2001)は記憶や学習機能の解明に関して極めて重要な成果である.
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