研究概要 |
末梢再生神経に対する電気刺激ならびに磁気刺激の影響を観察するために,マウスの坐骨神経を大腿中央の高さで,眼科用はさみを用いて切断し,切断2日後に皮膚の上から電気刺激と磁気刺激を与えた。電気刺激には,電気刺激装置(SEN-3301)を用い,1Hz,0.5mA,通電時間300msecの刺激を1回/secの割合で5分間与えた。また磁気刺激では,磁気刺激装置(マグスティム2000.ミニキ技研)を用い,最大出力の60%,30%,10%の刺激を1回/5秒の割合で5分間与えた。刺激後3,6,24時間でマウスを屠殺し,坐骨神経の近位断端における形態的変化を電子顕微鏡で観察した。電気刺激後3および6時間では再生神経のいくつかの成長円錐に多胞体が出現していたが,24時間後では異常な形態を示す成長円錐は観察されなかった。最大出力の60%や30%の磁気刺激後3および6時間では,多くの成長円錐に多胞体が出現しており,24時間後でも多胞体を含む成長円錐がいくつか観察された。電気刺激,磁気刺激ともに,再生神経の軸索部や親軸索には異常な形態変化はまったく観察されなかった。成長円錐は再生神経の伸長や進路決定に重要な役割を演じており,成長円錐を選択的に傷害する電気刺激や磁気刺激は,刺激の強さによっては神経再生に重大な影響を与えている可能性が示唆された。現在,成長円錐に傷害を与えない程度の弱い電気刺激や磁気刺激を与え,神経再生に対する影響を観察している。 また,筋の傷害と再生に対するこれらの物理刺激の影響を調べる目的で,マウスに下り坂走行をさせて下腿三頭筋に障害を与え,筋肉の血流量と酸素分圧,および筋の形態変化を経時的に観察した。
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