研究概要 |
本邦において脳梗塞は要介護者の主要因の一つであるが,その再発を適切に予防し要介護者を減らすことが患者自身の幸福と医療費の軽減のために重要な課題であると考えられる.そのために,本年度は脳梗塞症の予後に基づいた臨床病型分類と再発予防について以下の項目について検討を行なった. 【脳梗塞患者情報収集】急性期脳梗塞症例の登録システムとして登録事務局を大学に置き、専用の登録用紙に必要最小限の事項を各施設から事務局へ送信し,その後大学担当者が定期的に各病院を訪問し,詳細な患者情報を細部にわたり収集,データベース化するシステムを構築した.登録参加病院は鳥取大学医学部附属病院および山陰各地の市中病院の中で神経内科医が常勤する,公立八鹿病院,鳥取県立中央病院,鳥取赤十字病院,鳥取県立厚生病院,野島病院,山陰労災病院,博愛病院,済生会境港総合病院,松江市立病院,松江赤十字病院,広瀬病院,島根県立中央病院,国立浜田病院を対象とし,本研究の参加の同意を得た.本年度は現在までに537例の脳梗塞患者の登録を完了した.また本研究においては従来ラクナ梗塞と一括されていた症例の中にも心血管病変を有するものが見受けられることがわかってきており,穿通枝梗塞の登録を重視しているが,穿通枝梗塞例244例の登録を完了し.頚動脈超音波検査でのプラーク病変の有無について検討を行なった.その結果,ラクナ症候群を呈した症例が呈さない症例よりも病変の大きさが小さい傾向にあり,どちらの病型においても,頚動脈超音波検査でのプラークを有する頻度が60%以上と高頻度であり病変の大きさが大きいほど高頻度である傾向があることが明らかとなった. 来年度の研究実施計画としては本年度と同様脳梗塞患者情報収集を構築された脳梗塞患者登録システムを利用し,登録参加病院から患者情報収集を引き続き行なう.また登録された脳梗塞患者の予後調査として脳梗塞発症後1年,2年,3年と追跡調査を行ない再発の有無を検討する.再発が確認された症例に関しては初回発作と同様な項目を調査し情報を収集し,各臨床病型に対する再発率を検討する.
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