研究概要 |
本邦において脳梗塞は要介護者の主要因の一つであるが,その再発を適切に予防し要介護者を減らすことが患者自身の幸福と医療費の軽減のために重要な課題であると考えられる.そのために,本年度は前年度に引き続き脳梗塞症の予後に基づいた臨床病型分類と再発予防について以下の項目について検討を行なった. 【脳梗塞患者情報収集】急性期脳梗塞症例の登録システムとして事務局を大学に置き,各病院にて集計解析をした情報結果を収集し,データベース化するシステムを使用した.登録参加病院は鳥取大学医学部附属病院および山陰各地の市中病院の中で神経内科医が常勤する,公立八鹿病院,鳥取県立中央病院,鳥取赤十字病院,鳥取県立厚生病院,野島病院,山陰労災病院,博愛病院,済生会境港総合病院,松江市立病院,松江赤十宇病院,広瀬病院,島根県立中央病院,国立浜田病院である.本年度は現在までに1412例の脳梗塞患者の登録を完了した.また本研究においては従来ラクナ梗塞と一括されていた症例の中に心血管病変を有するものが含まれていることが明らかとなり,穿通枝梗塞の登録症例を重視している.穿通枝梗塞例は695例の登録を完了した. 【脳梗塞予後・再発調査】脳梗塞発症1年後の追跡調査では心原性脳塞栓症(CEI)123例,アテローム血栓性脳梗塞(ATI)149例,ラクナ梗塞(LAC)132例,原因不明(IUC)134例の計538例を解析した.死亡率は病型間で有意な差がみられ,LACが0.0%で最も低くCEIが25.2%で最も高かった.年齢はすべての病型において死亡率と有意な相関を認めた.登録症例全体の再発率は10.5%で,病型間ではLAC 7.5%,ATI 10.3%,CEI 16.3%で死亡率と同様の傾向を認めた.ラクナ梗塞では脳卒中の既往歴と糖尿病の有無が,再発と有意な相関が認められた. 来年度の研究実施計画としては本年度と同様,脳梗塞患者登録システムを利用し,登録参加病院から情報収集を引き続き行なう.さらに登録された脳梗塞患者の予後調査として脳梗塞発症後2年目以降の追跡調査を行ない再発の有無を検討する.再発が確認された症例に関しては初回発作と同様項目の情報を収集し,各臨床病型に対する再発率を検討するとともに,再発予防に向けた治療に関しても比較検討を進めていく.
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