研究概要 |
脳梗塞の再発を適切に予防し要介護者を減らすことが,患者自身の幸福と医療費の軽減のために重要な課題である.本研究では脳梗塞症の予後に基づいた臨床病型分類と再発予防について検討を行った. 【脳梗塞患者情報収集】急性期脳梗塞症例の登録システムとして事務局を大学に置き,各病院にて集計解析をした情報結果を収集し,データベース化するシステムを構築し運用を可能とした.登録参加病院は鳥取大医学部附属病院および山陰各地の市中病院の中で神経内科医が常勤する計14病院で開始し,中間集計を踏まえて,脳梗塞連続症例が登録可能で,かつ高率に予後調査が可能と判断した鳥取大学医学部附属病院,鳥取県立中央病院,済生会境港総合病院,島根県立中央病院の4病院でのみ追加登録を継続し,1568例の脳梗塞患者の登録を完了した. 【脳梗塞予後・再発調査】脳梗塞発症1年後の追跡調査では,心原性脳塞栓症(CEI)205例,アテローム血栓性脳梗塞(ATI)237例,ラクナ梗塞(LAC)198例,原因不明(IUC)189例の計831例を解析した.登録症例全体の再発は65例で,病型間ではLAC6.2%,ATI7.3%,CEI14.4%で,CEIは,ATI, LIに比して有意に高頻度であった.年齢と性別を補正した後に,再発に関与する危険因子の解析を進めた結果,LACでは脳卒中の既往歴と糖尿病の有無が,ATIでは脳卒中の既往歴が,脳梗塞再発と有意な相関が認められた. 【総括】日本人の脳梗塞発症後1年以内の再発率と再発に関する危険因子を明らかにした.今後,本研究を継続し脳梗塞発症後2年目以降の再発率の推移や関連する危険因子を明らかにし,再発予防に向けた対策を進めていく.また,新たな再発予測因子の検討もあわせて行っていく予定である.
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