研究概要 |
骨格筋収縮時の心臓・循環動態における自律神経性調節機構を解明するために,無麻酔除脳動物を用いて心臓を支配する心臓迷走神経および交感神経活動,動脈血圧,心拍数を直接記録し,骨格筋収縮が反射性心臓自律神経活動に与える影響を調べた. 実験方法として,上丘前-乳頭体吻側部レベルで除脳したネコを用いて無麻酔下の状態で心臓迷走神経活動,心臓交感神経活動,動脈血圧,心拍数を測定した.骨格筋収縮時の下腿三頭筋の張力をテンションメーターを接続して測定した.骨格筋収縮は脛骨神経の直接刺激で誘発した.さらに刺激周波数を20Hzと40Hzに設定し,骨格筋収縮の強度を変えたときの反射性調節の違いについても比較した. その結果,心臓迷走神経活動は骨格筋収縮時によって抑制された.この抑制は筋張力の高い収縮開始初期に強く,また収縮後期まで抑制は持続せず筋張力の減少に伴って活動が回復する傾向にあった.一方,心臓交感神経活動は骨格筋収縮時に増加した.この増加は筋張力の強い骨格筋収縮開始初期に著しく出現した.さらに筋張力の減少に伴って神経活動の増加分は小さくなった.またこの神経活動の増加は20Hzの刺激で得られる筋収縮よりも40Hzで得られる強い筋収縮強度の方が有意に大きかった.心拍数および動脈血圧は骨格筋収縮中増加した.またこれらの心臓・循環動態の変化は40Hzで得られた強い筋収縮強度において有意に大きかった. これらの結果は骨格筋収縮による心臓迷走神経活動は抑制,心臓交感神経活動は増加する反射性自律神経制御が存在することを明らかにした.またこの反射性自律神経の応答は骨格筋収縮時の心拍数増加の一因として関与していると考えられた.さらにこの反射性調節は筋収縮時の筋張力に依存していたことから,骨格筋由来の求心性線維(group IIIおよびIV)の内mechanoreceptorからの情報がより強く心臓自律神経活動に影響を与えることを示唆した.
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