研究概要 |
筋の萎縮要因:ラットの下腿三頭筋と足底筋を使用し,筋の萎縮に影響する要素を調べた.ギプスで足首を中間位に固定すると,これらの筋は,、1週後に22%,2週後に23%萎縮した.足首を底屈して筋を短縮位で固定すると萎縮が大きくなり,足首を背屈して筋を伸ばした状態で固定すると萎縮の程度は軽減した.腱を切断して張力がかからないようにすると,1週後に9%,2週後に20%萎縮した.支配神経を切断すると,1週後に31%,2週後に49%萎縮した 筋の回復と肥大:ギプス固定を1週間行った後にギプスを除去すると,筋の重量は回復に向かったが,運動を行わなかったラットより,毎日1回30分の水泳を2週間負荷した方が,有意に回復が促進された.また,協同筋である下腿三頭筋の腱を切除して足底筋に負荷をかけると,足底筋は1週後に22%,2週後に46%肥大し,腱切断後に毎日1回30分の水泳を負荷すると,1週後に31%,2週後に66%肥大した. 筋の収縮誘発による萎縮防止と回復促進上の注意点:坐骨神経を電気刺激して筋を30分収縮させると,傷害がおこり,7日後までには回復した.したがって,筋の萎縮を予防したり回復を促進するために神経刺激などで筋収縮を誘発する場合には,傷害をおこさないよう,条件に注意する必要がある. 以上より,筋は動かさないと1週間で約20%も萎縮し,張力がかからない状態では萎縮が一層大きくなるため,萎縮を最小限にして筋力の維持を計るには,早期のリハビリが重要かつ効果的である.しかし,条件によっては傷害を起こすので,注意が必要と思われる.脱神経は,筋萎縮の最大要因なので,神経の温存や再生促進が重要である.
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