研究概要 |
本研究の目的は、磁場、模擬微小重力等の物理的環境が、運動器系細胞の筋芽細胞、骨芽細胞の分化にいかなる影響を及ぼしているかを分化誘導因子とその細胞内シグナル分子の挙動で明らかにすることにある。平成12年度は、最初に筋芽細胞での実験を試みたが、細胞の挙動が一般に知られている入手可能なヒト筋芽細胞株が無かったので、まず、ヒト骨芽細胞を培養し、遺伝子導入装置で微小磁性体を細胞内に導入して、磁場環境(0,01〜0,05T)で細胞を培養した。また、重力分散型模擬微小重力発生装置(3Dクリノスタット)を使って重力分散による骨芽細胞の分化の経時的変化を検索した。 それにより以下の知見を得た。 1)微小磁性体を細胞内に導入し、磁場環境で細胞を培養すると形態学的、オステオカルシン等の骨分化調整因子から骨芽細胞の分化が促進された。同時に細胞内シグナル伝達に関わるMAPキナーゼ・ファミリー(MAPK/ERK、p38、SAPK/JNK)のリン酸化をみるとp38のみ特異的に活性が高まった。 2)3Dクリノスタットで細胞を培養すると形態学的、オステオカルシン等の骨の分化調整因子から骨芽細胞の分化が抑制された。同じく細胞内シグナル伝達に関わるMAPキナーゼ・ファミリーのリン酸化をみるとp38のみ特異的に活性が低下した。 3)以上から骨芽細胞の分化の促進、抑制には物理的刺激が関与し、MAPキナーゼ・ファミリー(MAPK/ERK、p38、SAPK/JNK)のうち、p38がそれら物理的刺激に対して応答することが分かった。 上記の成果を得て、来年度(平成13年度 継続)においては、物理的刺激に応答するヒト骨芽細胞(または筋芽細胞)の細胞内全タンパク質を二次元ポリアクリルアミド電気泳動法にかけ、誘導発現したタンパク質を分離精製し、物理的刺激に応答するタンパク質、さらに遺伝子を明らかにしたいと考えている。
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