研究概要 |
【目的】褥瘡は長期臥床の患者において発生頻度が高く,リハビリテーションを遂行する上で大きな阻害因子となる。その発生の第一の原因は圧迫であり,局所の虚血・壊死が起こり,褥瘡が形成されると言われている。圧迫力と組織が変性に至るまでの時間との関係は多く論ぜられてるが,圧迫力と血流との関係を追求した報告はあまりない。平成12年度の研究として小型圧力センサーと血流計を用い,圧迫による血流量の変化を踵骨部後面で同時に測定し,その結果を解析した。 【対象と方法】健常成人8名を対象にした。圧センサーと血流センサーを重ねて被検者の踵骨後面に貼付し,仰臥位にて踵をアクリル版の上に置き,足関節にカフを取り付け1分間に5cm上がる速度で1秒挙上,5秒停止を繰り返し,踵骨後面にかかる圧と血流を経時的に測定した。 【結果と考察】踵を置いた状態では,約350mmHgの圧がかかっていたが,下肢を徐々に挙上していくと約120mmHgで血流は再開し始め,その後10mmHgでほぼ正常の血流が得られることがわかった。小動脈の圧は32mmHg,毛細血管圧は16〜32mmHgと意外に低く,わずかの圧迫でも血流は停止すると考えられてる。ベッド上仰臥位での踵には45mmHgの圧がかかるとされているが,褥瘡を予防するためにはどの部位も10mmHg以下にするのが理想かと思われる。今後はこの方法を用いて、褥瘡のリスクとなる可能性のある糖尿病、麻痺、高血圧などを持つ患者での測定を行い、健常人に比較して圧と血流の関係が異なるかどうかを検証する予定である。
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