研究概要 |
22歳から76歳までの健康な59名(女性37名、男性22名)の被験者に対し、同意を得て、右下肢のgastrocnemius muscle(速筋)とsoleus muscle(遅筋)のT2緩和時間を調べた。gastrocnemius m.では、年齢とT2緩和時間との間に有意な相関(r=0.53,P<0.01)を認めた。soleus m.では両者に有意な相関はなかった。被験者を20代、30代、40代、50代、60歳以上の5グループに分類し、グループ間でT2緩和時間を比較すると、gastrocnemius m.では60歳以上のグループは他のグループと比較して有意に(P<0.05)T2緩和時間は延長していた。soleus m.ではグループ間に有意差はなかった。gastrocnemius m.とsoleusm.とのT2緩和時間を比較すると60歳未満のグループではsoleus m.のT2緩和時間は有意に(P<0.05)延長していたが、60歳以上のグループでは有意差を認めなかった。これらの結果から、T2緩和時間は速筋の加齢の指標として有用であると考えられる。MRIは非侵襲的方法であり経過観察や繰り返しての計測にも有用と考えられる。加齢に伴うT2延長のメカニズムとしては、typeIIファイバー(速筋に多く分布)の萎縮に伴う細胞外腔の拡張が推定され、動物実験を進めた結果、T2緩和時間と速筋の細胞外液量との間に強い相関を認めた(r=0.84)。したがって、加齢に伴うT2緩和時間の延長は、typeIIファイバーの萎縮に伴う細胞外液量の増加を反映したものと考えられる。これらの結果は、Investigative Radiology誌(36(12),692-698,2001)に発表した。 また、steroid myopathyとT2緩和時間との関係を調べる動物実験では、steriod筋肉注射後速筋であるgastrocnemius m.およびtibialis anterior m.ではT2緩和時間の有意な延長を認めたが、遅筋であるSoleus m.では有意な変化はなかった。凍結切片で筋肉標本の細胞外液量を調べてみると、Control群と比較してsteroid投与群では有意に細胞外液量が増加しており、steriod myopathyによるtypeIIファイバーの萎縮を反映した所見と考えられた。ステロイド治療に伴う筋肉障害の指標としても有用性があると考えられた。この結果については、現在投稿準備中である。
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