研究概要 |
拘縮発生時の筋線維と筋内膜コラーゲン線維網の形態変化を検索し,併せて拘縮に対する伸張運動の影響も検索した.Wistar系ラットを実験群と対照群に分け,実験群は,足関節を最大底屈位で1,2,4,8,12週間ギプス固定した.また,4週間固定した群の一部は,固定後に麻酔下で1日30分間(週6回),述べ3週間ヒラメ筋を伸張し(伸張群),その比較対照には,固定後に同期間,麻酔のみをかけた(非伸張群).実験終了後は,麻酔下で足関節背屈角度を測定し,一部のヒラメ筋の凍結横断切片を光学顕微鏡で検鏡,一部は3%グルタールで組織固定,その縦断切片を光学・透過電子顕微鏡で検鏡した.また,一部は筋内膜コラーゲン線維網を走査電子顕微鏡で検鏡した.足関節背屈角度は,対照群に比べ固定1週で17%,2週で29%,4週で57%,8週で68%,12週で72%減少した.筋節長は,対照群に比べ固定1週で有意に短縮し,結合組織も固定1週で増生していた.一方,筋内膜コラーゲン線維網の形態は,固定1,2週では多くのコラーグン細線維が筋線維の長軸方向に対して縦走し,対照群と同様であったが,固定4週以降は横走するコラーゲン細線維が増加した.伸張群と非伸張群を比較すると筋節長は伸張群が有意に長く,結合組織の増生や筋萎縮の程度も伸張群が軽度であり,筋内膜コラーゲン線維網の形態変化も伸張群で著しく改善していた.以上の結果から,1,2週間の固定で起こる拘縮は,筋線維自体の伸張性低下や結合組織の増生によるもので,4週間以上の固定になるとコラーゲン線維網の形態も変化し,拘縮はコラーゲン線維の滑動性低下の影響が加わることでさらに進行すると推察された.一方,4週間のギプス固定によって生じた筋線維やコラーゲン線維網の形態変化は,自然回復の場合より伸張運動を行う方が改善しており,伸張運動は拘縮に対して有効な治療手段であることが示唆された.
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