研究概要 |
近年交通事故による脊髄損傷,脳出血・脳梗塞による脳卒中などが原因で起こる中枢神経麻痺による障害が増加している.これらの障害では末梢神経や筋肉が正常である場合が多い.そこで,末梢神経や筋肉に電気刺激を与えて,歩行を再建する試みがなされているが,マンマシンインターフェース,すなわち「人がいかにして機械に指令を送るか」ということが問題であった.例えば,「患者がスイッチを押すと電気刺激が筋肉に入力される」インターフェースでは一歩ずつスイッチを押さねばならず,患者に負担がかかっていた. そこで今回われわれは,足関節の背屈には至らないが,前脛骨筋に微弱な筋放電を認める患者に対し,筋電を取得したときに,その振幅に応じて刺激の強さを変化させる刺激装置を試作し,臨床に供した.このようなインターフェースは患者が足関節を背屈させようとしたときに,その力を増幅しているだけなので,患者の意思を完全に反映している. さらに,装置をスポーツ用膝サポータに収まる大きさまで小型化し,患者のズボンやスカートに隠すことができるようにした.装置は従来必要であったの商用電力を必要とせず,9Vの乾電池(006P型)1つで十分な電気刺激ができるようになった. サポータに取り付けた本装置を患者の膝に装着し,電極を腓骨神経直上の皮膚上と前脛骨筋の筋腹直上の皮膚に貼った.このことで,前脛骨筋および長短腓骨筋に電気刺激を与えることができ,内反尖足が改善された.したがって,上肢が正常ならば,患者自身で本装置を装着でき,爪先を接地せずに歩行することができるようになった. 今後,筋電図解析・歩行解析などにより歩行の質を確認する予定である.
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