視覚障害者の単独歩行を支援する装置として、障害者を目的地まで誘導するための装置の開発研究を行った。障害者を誘導するためには障害者がいる位置を正確に把握する必要があるが、ここではこの位置把握のためにDGPSを利用した屋外用の誘導装置、および赤外線標識を利用した屋内用誘導装置を試作し、さらに被験者を用いた誘導実験を行いシステムを評価した。 DGPSを用いた誘導装置は、利用者の位置を計測するDGPS、DGPSが使用できない際に位置を推定する自立測位装置、およびこれらからの情報に基づき音声で位置案内を行うノート型コンピュータにより構成される。昨年度まではコンピュータのOSとしてMS/DOSを用いリアルタイム制御を行っていたが、今年度は音声データの取り扱いを容易にすることを目的としてWindowsベースの制御に切替えた。その結果として位置計測におけるリアルタイム性は失われたが、誘導実験からはこのことによる問題点は特に見出せなかった。また誘導に用いる音声のソフトウェア上の取り扱いがMS/DOSベースに比較して容易になったため、実際の誘導に際して的確な音声を用いることが可能となった。 赤外線標識を用いた誘導装置では利用者の位置を計測するために、屋内施設の天井等に取り付けた位置コードを発信する赤外線標識を利用する。視覚障害者が持った誘導装置はこの赤外線標識からの信号を受信することで障害者の位置を知り、目的地までの経路を音声で誘導する。開発を行った誘導装置に対してロービジョン者を被験者とした誘導実験を行った結果、壁のような手掛かりのある場所では問題なく誘導できるものの、多くの視覚障害者が手掛かりの何もない広い空間をまっすぐに移動することができないことが分かった。この問題点を解決するために、手掛かりのない場所では音により到達目標地点を提示する直進支援装置を開発した。現在この装置を実際にシステムに組み込み誘導実験による評価を行っている。
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