研究概要 |
変形性膝関節症の運動療法として,荷重位での運動は荷重位での動作が頻繁に行われる日常生活動作の改善が期待される.本年度は変形性膝関節症を有する中高年を対象に膝装具の有効性について検討することを目的として研究を実施した. 変形性膝関節症(内反膝)を有し,研究に同意を得られた5名(男1名,女4名,平均年齢65.5歳)を対象とした.測定は,装具なし(裸足),支柱付膝サポーター(マイン・ゲルテックス・ニーグリップ),Dynamic Knee Brace(DBK)の3つの条件で,装具の有効性を下肢アライメントの評価をX-ray撮影(歩行立脚期中期),静的・動的平衡性の評価(重心動揺計・動的平衡性評価機器),F-Scanによる足底圧中心軌跡(COP),疼痛の評価(VAS),日本整形外科学会膝疾患治療成績判定基準(JOA)スコアー,Cybexによる代替四頭筋,ハムストリングス筋の筋力測定,10m歩行速度によって検討した. DKBは変形性膝関節症(内反膝)患者の歩行中において,大腿外側と下腿外側からの矯正力を与えることが期待できる装具であり,膝関節症患者の疼痛軽減と変形の進行防止に効果が期待できるといわれているが実証されていない.今回の測定結果から,DBK装着は装具なし・支柱付膝サポーターに比較して,COPは外側に偏移し,歩行中のアライメントが外側に強制されたことが認められた.10m歩行速度ではDBK装着が最も速かった.しかし,静的・動的平衡性の評価では3つの測定条件では有意な差は認められなかった.68歳の女性は装具なしでは階段を下りる際,膝疼痛のため手すりを使い交互降りができなかったが,DBKを装着すると手すりなしで交互降りが可能になった.DKBは装飾的に問題があり,本邦においては受け入れにくい点があるが,変形性膝関節症の進行を防止する点を考えると,装具装着しての運動療法が重要である.
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