研究概要 |
本研究は軽度変形性膝関節症を対象に運動療法によるその予防と改善を目的とした. 平成12年度は中高年を対象に水中運動を行い陸上運動群との比較を行なった.膝伸展筋力は水中群陸上群ともに増加した。歩行時の足圧中心軌跡の前後への動揺は水中群のみ有意に低下した。また水中群のみ疼痛度が有意に低下した。運動療法の重要な側面であるDrop outは水中群においてのみ観察されなかった。以上より水中運動療法は軽症の膝OAの運動療法として効果があると考えられた。 平成13年度はやはり中高年を対象に装具(Dynamic Knee Balance : DKB)を用いた荷重位での運動を行った.その結果,DKB装着は装具なし・支柱付膝サポーターに比較して,足圧中心は外側に偏移し,歩行中のアライメントが外側に強制されたことが認められた.特に68歳の女性は装具なしでは階段を下りる際,DKBを装着すると手すりなしで交互降りが可能になった.変形性膝関節症の進行を防止する点を考えると,装具装着しての運動療法が重要であると結論した. 平成14年度は荷重位での安定性が得られるトレーニング法確立を目的にバランストレーニング前後での荷重位での安定性の変化を検討した.対象は,成人男女28名であった.トレーニング内容は,全身運動の中での重心の移動,マット運動での身のこなし方,人と組み合ってバランスをとる組み立て体操などであった.動的平衡性の評価には,Biodex Stability Systemを用いた.その結果左右両脚ともトレーニング前に比べて3ヶ月トレーニング後の方が全方向安定性指数及び前方/後方の安定性指数で有意な測定値の減少が認められた. 以上から水中あるいは装具を用いた荷重位でのトレーニングを行なうことにより,変形性膝関節症の予防につながる運動プログラムを考案できる可能性があると結論した.
|