研究概要 |
我々は、骨の細胞が機械的刺激に応答するメカニズムを検討し、骨細胞においてPTH等のホルモンが機械的刺激のアナボリックな効果に対して相乗的に働くことを示してきた。本研究においては、骨頭置換の際の廃棄骨片検体より調製したヒト骨細胞でも伸展刺激に応答してc-fos, cox-2などの初期応答遺伝子ばかりでなく、骨基質タンパクのオステオカルシンや増殖因子IGF-IなどのmRNAの発現が起こること、それらがPTH存在下では相乗的に昂進されることが判った。これが実際骨においても成り立っていることを示すことが重要であるため、更にラットを運動制限下とフリーの状態でそれぞれPTH存在・非存在下に6週間飼育し、骨密度、骨形態のパラメータならびに骨内の細胞によるタンパク・mRNAの発現について検討した。その結果、 1)脛骨皮質骨において、骨密度は運動制限下で最も低く、フリー、運動制限下のPTH投与、フリーでPTH投与の順に有意に高くなっていた。フリーと、運動制限下のPTH投与の値はほぼ同じであった。又、運動制限時の骨密度に、運動(フリー)とPTHそれぞれによる上昇分を加えた値は、両者の存在下に飼育した(フリーでPTH投与)場合の値よりも有意に低かった。 2)成長因子IGF-Iや基質タンパクのmRNAの発現低下が運動制限により生じること、それらを運動制限下のPTH投与が有意に回復させていること、PTHの存在下では運動だけの効果(フリー)による発現増加に加えて1)の場合と同様に相乗的な昂進が確認された。 従って不動化(寝たきり)による骨萎縮の予防あるいはリハビリテーションの一環として、ホルモン療法と軽い運動による機械的刺激を組み合わせることにより、PTHの所要量を下げ、侵襲度の低い治療を行うことができる可能性が考えられた。
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