研究概要 |
我々は対麻痺歩行機能再建の鍵となる股関節制御のためのスライド式内側単股継手を開発し,これが,既存の内側股継手に比べ,歩行時の骨盤回旋を減少させ歩行の安定化をもたらすことを確認した.さらに実用的な歩行再建を行うため,平成12年度は,歩行効率向上のための股関節自由度を増やした股継手の開発・検討と起立補助機構を備えた長下肢装具部分の開発・検討を行った. 1.内旋機構付与股継手の開発:股関節自由度を屈曲・伸展に加えて内旋・外旋を各10度ずつ許容する股継手を試作・検討した.健常者1例と対麻痺者1例における歩行実験では,立位安定性は変わらず,立脚期の足部回旋が減少した.主観的運動量は減少した.実用的側面では歩行中の方向転換が容易になった. 2.伸展補助装置を備えた膝継手の開発:軽量,低コストという利点から,膝伸展補助装置としてコイルバネを使用した両側支柱長下肢装具を開発した.バネ強度は0.56Kg・m/1本で,膝継手外側に位置させた.座位でバネ機構をオンとし,起立時にその回復力を利用した.膝継手ロックにはスイスロックを用いた.対麻痺者(39歳男性,Th10A)で試行実験を行った結果,システムの股関節外転設定角度が通常の10度である場合,起立・立位時の歩隔が大きく,膝軸が床面と平行を保てないため,最終伸展位確保が困難であった. 3.単内側支柱長下肢装具の開発:2の両側支柱型の結果を踏まえ,初期外転角を減じたうえで外側支柱を取り除き内側支柱のみとした長下肢装具部分を設計,作製した.伸展補助用バネは膝継手内側に位置させた.膝継手ロックにはスイスロックを用いた.内側支柱型では車椅子座位でのかさばり問題も改善された.対麻痺者に試用し,車椅子からの起立動作実験を行った.平行棒内,歩行器使用において,安定した起立・立位動作が再建できた.しかし,杖での起立動作は困難であった.また,低頻度(5%)ながら膝継手ロック不全を生じ,実用的安全性が課題として残された.
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