研究概要 |
目的:上肢が健常である脊髄損傷者で、車いすマラソン上位選手と一般対麻痺者を対象に上腕三頭筋を被検筋として、等尺性収縮時の筋電スペクトル解析を行い,上位選手の疲労特性を明らかにすることを目的とした。 対象と方法:車いすマラソン上位選手9名と対麻痺コントロール6名である。上位選手の平均年齢は29.0±8.2歳、マラソン歴は平均5.8±2.2年、年間平均フルマラソン参加数は約2回である。コントロールは余暇にスポーツを楽しむ程度の男性対麻痺者で平均年齢は27.5±8.9歳である。初めに右上腕三頭筋の等尺性最大筋力(MVC)を測定した。次に十分な安静をとった後、50%MVCの等尺性収縮を可能な限り保持させ筋電波形を導出した。パーソナルコンピューターにデータを転送し、中心周波数(MF)、平均パワー周波数(MPF)を算出した。 結果:車いすマラソン上位選手の等尺性最大筋力の平均は42±7Nm、コントロールは41.±7Nmであり,有意差はなかった。MF、MPFの減少率は車いすマラソン上位選手でおのおの8.9±4.6、9.7±4.6%/minであり、コントロールでは22.3±8.2、21.2±6.4%/minであった。MF、MPF減少率は両者とも、車いすマラソン上位選手とコントロールにはt検定において有意差があり、上位選手におけるMF、MPF減少率は小さかった。 考察:車いすマラソントップアスリートにおいて、上腕三頭筋は持久性に秀でた筋組成を持っていることが示唆された。個々人の筋組成は従来組織学的にしか判断できなかったのが、筋電周波数解析上ある程度推定することが可能となった。競技者により白筋優位でスプリント向きか、赤筋優位で持久走向きかをある程度推定でき、競技種目の選択や更なるスポーツ科学への応用が期待される。
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