研究概要 |
本研究は,尿中NAG指数の測定とSDS-PAGEによる尿蛋白の分析が動物の腎疾患診断マーカーとして有用か否かを検索する目的で実施したものであり,以下のような成果が得られた.(1)ネコとウシの腎症モデルでは、尿中NAG指数が早期から上昇し腎実質傷害の存在を示唆した。また、NAGアイソザイムはB分画の増加がみられた。(2)泌尿器病の自然発症例に対する検索では、尿中NAG指数は慢性腎不全症例、急性腎不全症例ならびに腎孟腎炎症例で明らかに高値を示した。しかし、ネコの下部尿路疾患やイヌの膀胱炎や尿道炎の症例では、尿中NAG指数は正常範囲内であった。イヌの慢性膀胱炎の症例で腎孟腎炎を併発した例では、経過途中からNAG指数は高値を示し炎症が上行性に腎孟に達したことを示した。したがって、下部尿路感染症における上行感染のモニターとして、尿中NAG指数の測定は有用であった。2次性腎疾患の症例として糖尿病と子宮蓄膿症の症例について尿中NAG指数をモニターした結果、腎機能検査値の低下を来す前にNAG指数の増加がみられたことから、2次性腎疾患のモニターとしても有用であると考えられた。(3)SDS-PAGEによる尿中タンパク質の分析では、慢性腎不全の症例ではレチノール結合蛋白などの低分子蛋白の出現が観察された。一方、下部尿路感染の症例で血尿を呈しているものでは、そのSDS-PAGE分析パターンは血清と同様のパターンを示し、腎実質の傷害を区別するのに有用であった。これらの尿蛋白分析は、尿中NAG指数の測定と組み合わせることにより、より有効であった。 以上のことから、尿中NAG指数とSDS-PAGEによる尿蛋白の分析は動物の泌尿器疾患診断マーカーとして有効であることが証明された.
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