本年度実施計画の下記の3項目について以下の成果が得られている。 犬のアトピー性皮膚炎のサイトカインバランスを末梢血単核球におけるインターロイキン4(IL4)とインターフェロンγ(IFNγ)の比を指標として評価したところ、Th2サイトカインがTh1サイトカインに比較して優位であることがわかり、犬でもヒトと同様に末梢血中のサイトカインバランスがTh2側に傾いていることが判明した。 この原因としてはヒトではその一つとしてインターフェロンγの上位にあるインターロイキン12受容体の遺伝子的異常などが調べられている。犬でも同様な作用機序が関係していることが推察されている。そこで、犬のアトピー性皮膚炎の治療のひとつとしてサイトカインバランスの均衡を考慮するとき、IL12受容体の遺伝子異常の有無に関わらず、IFNγを体外から投与し、一時的にせよTh1/Th2のサイトカインバランスを平行に保つのは意味のあることだと考えた。そこで、アトピー性皮膚炎の犬10頭にリコンビナントのイヌインターフェロンγを1週間に3回合計2週間投与し、投与前と投与後の臨床症状の改善、総IgE値の推移、IFN/IL4mRNA比、投与前後の皮膚の病理組織学、マスト細胞数の計数などを行った。その結果、イヌインターフェロンを投与したイヌでは症状の改善とともに総IgE値がすべての症例で減少し、IFN/IL4比が上昇してTh1サイトカインへのシフトがみられ、皮膚病理組織学的には表皮の肥厚の改善、マスト細胞の減数がみられた。症状が改善しなかった症例ではIFN/IL4比がTh1にシフトしていなかった。以上のことから犬のアトピー性皮膚炎のTh1/Th2サイトカインプロフィールを外部投薬によりTh1に戻すことにより意味のある臨床的な改善が得られるものと考えられた。
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