物体の非弾性的な衝突過程と、それに伴う破壊現象の数理的な理解のために、本研究歪はできるだけ単純な数理モデルの構成と解析、および衝突のモデル実験を行い、以下の知見を得た。 (1)偽1次元的な棒の衝突実験装置を製作し、エネルギー散逸、衝突時の接触時間棒内部の過渡的な歪の伝播について測定を行なった。その結果、音速に較べて十分遅い衝突では、衝突時間の速度依存性や接触点での応力時間変化などはHertzの準静的理論の枠組みでよく説明できることを確認した。その一方、大きな衝突速度では、音波の伝播過程が支配的となり、エネルギー散逸が衝突速度と共に増大するため、準静的理論は適用できない。本研究では、これらのクロスオーバーを定量的に説明することに成功した。 (2)1次元バネビーズモデルによって、衝突過程を理論的に解析した。非線形な相互作用を持つバネビーズモデルを硬い壁に衝突させた場合、内部摩擦などを考えなくても、並進運動エネルギーが音響エネルギーに変換される過程で散逸が生じる。そのとき、衝突によるエネルギー散逸の割合は、物体の運動エネルギー(速度)とともに増大する(「はねかえり係数」が減少)するが、衝突が音速の1/10程度以上ではむしろエネルギー散逸が現象するような、逆転が生じる場合のあることを見出した。その過程を詳細に検討することによって、散逸量の速度依存性の表式を理論的に導出した。 また、高速で衝突した場合には1次元物体が多数の破片に分裂するが、そうした破壊によって生成される破片の分布統計がべき乗則に従うことを確認し、分布関数形を理論的に考察した。
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