研究概要 |
本研究の目的は、従来はあまり省みられなかった植物ホルモンを仲介物質とした植物間の相互作用が群生などの生態パターンへどのように影響し、我々によって見出された成長時期に依存したホルモンへの敏感生(これを感受性と呼ぶことにする)が生態パターンを形成する場合にどのような役割を果たすかを非線形方程式の時間発展のシミュレーションによって明らかにすることである。 我々はこれまでに発芽・発根期のアズキにおいて生長のよい根がクラスターを作ったり、群生の端において特異な生長をするという現象を報告してきた。このような群生における植生パターンは生長した植物においては光や水・養分など資源の獲得をめぐる個体間の競争によるものとされているが、根の発芽・発根期においては養分は種子から供給されるのでこのような効果は考え難い。そこで我々は,このような根におけるクラスター化の原因として植物ホルモンによる相互作用が重要な役割を果たしているのではないかと考え、培地の拡散の効果や植物ホルモンの作用を実験的に明らかにしてきた。これを基にして拡張されたチューリング型モデルを提案し、その数値シミュレーションを行った。その過程において、植物ホルモンや環境ストレスに対する植物の感受性が成長初期ほど大きいということを実験によって見出し、その効果をシミュレーションによって検証した。 その結果、ホルモンの拡散速度と感受率の生長に伴う変化がクラスターの大きさを決定する重要なパラメータであることが明らかとなった。これらのパラメータはホルモンが生長に促進的、あるいは抑制的に働くかによって、クラスターの成長に対する働き方も変化し、自然界において様々な群生パターンを生み出すもととなっている可能性が示唆された。 さらに、植物の根が地中で張り巡らされる効果を取り入れたシミュレーションを行った結果、群生において周期的パターンが発生する可能性が示唆された。そこで側根を考慮したより実際に近いモデルで詳細なシミュレーションを行った。その結果、側根の広がりとホルモンの拡散によって成長の良いクラスターの大きさが決定されたり、クラスターが成長せず、相互作用が働かない場合がることが分かった。
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