本研究の目的は、動脈硬化におけるLDLR遺伝子ファミリーLR11の受容体機能を明らかにすることである。 LR11蛋白を高発現した血管平滑筋細胞を樹立するために、LR11cDNAと血管平滑筋A7r5細胞にトランスフェクションし、2種類の安定発現株の選択に成功した。本樹立株を用いて、血管平滑筋機能を検討した結果、ベクターのみトランスフェクションしたコントロール細胞に比べ、ボイデンチャンバー法による細胞遊走能とコラーゲンゲルをコートしたトランスウエルを用いた浸潤能が亢進していることが明らかになった。この機能亢進は、LR11機能を抑制する中和抗体、RAP(Receptor Association Protein)、アポ蛋白Eにより抑制された。これらの細胞はLR11蛋白の発現とともに、uPAR (urinary type plasminogen activator receptor)を高発現していることが明らかになり、その機能を抑制することにより亢進した細胞遊走および浸潤能は消失した。uPAR蛋白の代謝を検討した結果、LR11発現細胞において遅延していることが示され、これらの結果は、LR11がuPAR代謝を阻害することにより細胞外マトリックスに対するプラスミノーゲンによるプロテアーゼ作用を増強し、細胞遊走および浸潤を増大することを明らかにした。 LR11過剰発現マウス作成のために、LR11cDNAを卵細胞に導入し、発育固体の樹立に成功した。アルブミンプロモーター制御における肝細胞でのLR11発現を確認した。このモデルマウスは、上記の成績と合わせ、動脈硬化修飾モデルとレて有用になると考えられる。 これらの研究実績は当初の研究計画のほぼ100%に相当するものであり、その一部は、英文雑誌に発表された。
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