研究概要 |
1.STAT3心室筋特異的欠損マウスの作成と解析:サイトカインシグナル伝達分子Gp130により活性化される転写因子STAT3による心不全進展の分子制御の機能解析の目的でSTAT3の心臓特異的遺伝子欠損マウス(STAT3CKO)を作製した。生後約5ヶ月のSTAT3 CKOの左心室においてvan Gieson染色陽性により同定される心筋間質および血管周囲の線維化を認めた。線維化のメカニズムの解析のため、線維化関連蛋白の発現を免疫染色にて観察したところSTAT3 CKOの心室にてTGF-β1,3の発現増強が確認された。これらのことはSTAT3が心筋リモデリングの制御に重要であることを示唆した。以上より、サイトカインシグナル伝達分子gpl30-stat3は心不全進展の分子制御に重要であり、今後の新たな治療戦略のターゲットになると考えられた。 2.心筋におけるSTATとSMADのクロストークによる分化調節機構:新生児ラット培養心筋細胞において、BMP-2はSmad1及びp38MAPKの経路を活性化した。BMP-2によりJunBおよびBNPmRNAはLIFと同等に発現増強したがが、形態的な肥大作用やロイシン取り込みの増強は観察されなかった。しかしながらBMP-2はSmad1を介してBcl-xLの発現を誘導し抗アポトーシス作用を示した。またBMP-2はLIFと協調的に働き、さらなる心筋保護作用を示した。次にαMHCプロモーターの下流にマウスSmadl c DNAを組み込んだトランスジェニックベクターで心筋特異的Smadl高発現マウスを作製し、心臓においてSMADlおよびリン酸化SMAD1、さらにBcl-xlの発現亢進を確認した。これよりin vivoにおいてもBMP-SMAD1のシグナル伝達経路は重要な心筋保護機構の一つである可能性が示唆された。
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