我々が新たに見いだしたハエのcestigialホモログと思われるマウスのVg関連蛋白(mVRF)は、ヒトのそれ(Tondu)とN末側のSd/TEF結合領域と思われる配列はよく保存されていたが、それ以外は全体で49%の相同性しか示さず、その機能について殆ど不明であった。そこでmVRFの欠失変異体や、GAL4のDNA結合ドメインとの癒合蛋白等を作成し、酵母GAL4の結合配列やTEFの結合配列(GTIICモチーフ)の下流にルシフェラーゼ遺伝子を持つ種々のレポーターとHeLa細胞に一過性に共発現させることにより、転写活性を指標に構造機能連関を解析した。その結果、ハエのVgと相同性を保つN末側(1-74)にTEF-1と相互作用する領域が、またそれよりC末側に転写活性を抑制する領域が存在することを示唆する結果が得られた。またノーザンブロットで発現レベルが顕著な胎盤において、in situハイブリダイゼーションによる詳細な発現分布の解析を試みたが、バックグラウンドが高く明確な結果は得られなかった。さらにマウスの心臓mRNAとヒトVRFcDNAをプローブにしたノーザンブロットで、他の組織と明らかに大きさの異なるバンドが検出され、新たなVRFの存在が示唆された事から、マウス心臓のcDNAバンクをスクリーニングし、多数の陽性クローンを単離して塩基配列を決定したが、その多くはOBカドヘリン等を始めとする局所的に高いホモロジーを有する塩基配列で、有意なクローンは得られなかった。一方、我々が見いだしたTEF-1ファミリーの一つ、ETF遺伝子の発現調節に関しても、本遺伝子の第1イントロン内の117塩基配列に、細胞特異的なエンハンサー活性を見いだし、その中のGCリッチな配列とGAリッチな配列に、各々Sp1及びGBF(GAエレメント結合因子)が結合して、細胞特異的なエンハンサー活性が発揮される可能性を示唆する結果が得られた。
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