研究課題
基盤研究(C)
近年、PCBやダイオキシン等、内分泌撹乱物質が生殖ホルモンのみならず、甲状腺ホルモンに影響を与えている可能性が示唆されている。本研究では甲状腺ホルモンと脳機能の発達に着目し、PCBやダイオキシン類が甲状腺ホルモン系を撹乱するとの仮説に基づき、そのメカニズムを解明することを目的とする。遺伝的にヒトに近いサルを用いて、内分泌撹乱物質の影響が大きいとされる胎児期、乳児期に、これら内分泌撹乱物質が脳機能の発達に及ぼす影響を分子生理学的、内分泌学的、行動学的に調べた。当研究所にて飼育している来歴既知の成熟アカゲザルおよびニホンザルを、さらにカニクイザルを使用し、開発した妊娠診断法により診断した受胎日の明かな妊娠ザルを用いて次の実験を行った。妊娠初期のメスザルに30日間、内分泌撹乱物質としてジエチルスチルベステロールを5mgもしくは10mg経口投与した。これらのサルの胎児または生まれた新生児を用いて実験を進める予定でいたが、投与されたサルはすべて流産した。児は流産後直ちに母ザルによって食べられ、実験使用不可能であった。しかし、観察しうる限り、外部奇形は見られなかった。これらのことから、次に、内分泌撹乱物質として影響が穏やかとされるジェニステイン5mgを妊娠初期のメスザルに60日間経口投与した。これらのサルの妊娠期間、新生児の体重、頭尾長は正常であり、また新生児に外部奇形は見られなかった。得られた新生児を用いて分子生理学的な解析を行った結果、これら内分泌撹乱物質投与により、血中および組織中インヒビンに変化があること、新生児視床下部におけるステロイドホルモンレセブターの局在に変化が見られることがわかった。また、これとは別に非妊娠カニクイザル5頭にジェニステイン5mgを月経初日から30日間経口投与し、尿中ElC,PdG、FSHを酵素免疫測定法により測定した。その結果、ジェニステイン投与により、カニクイザルの性周期が有意に延長すること、この延長は卵胞期ではなく黄体期が延長すること、またゴナドトロピンのサージの値が低値になることがわかった。これらの結果はサルにおける内分泌撹乱物質の性周期や胎児への関与を裏付けるものである。
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