研究概要 |
本研究では、ダイオキシン(2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD)暴露CB.17雄マウスでの継世代的影響を検討するために、雄マウスにTCDDを100ng/g体重を単回経口単回投与し、無処置の健康なCB.17雌マウスと交配した。そして、その子孫における致死、奇形などの形態学的異常、仮死等の機能異常、被曝個体の生殖行動、および生殖器への影響を調べた。また、DNA損傷を伴わない生殖毒性発生機構、あるいは、構造遺伝子以外の変異に基ずく遺伝的影響を調べるために、反復配列遺伝子であるPc-3遺伝子の次世代での変異の検出を試みた。 その結果、100ng/gダイオキシン曝露群では、対照群に比べて高度に有意な着床率(p<0.01)の低下、高度に有意な(p<0.001)仮死(Respiratory Distress Syndrome, RDS、呼吸切迫症候群)の増加、対照群に比べて統計学的(危険率5%)には有意性が認められないものの妊娠後期胎芽死亡率の増加が認められた。また、対照群に比べて有意に質の異なった奇形胎仔率(p<0.05)の増加も認められた。観察された奇形の症例は、対照群で小人症が2例、口蓋裂1例、メッケル憩室遺残1例、眼瞼開裂1例、ダイオキシン100ng/g曝露群では、小人症が4例、短尾6例、曲尾1例、合指症1例であった。また、反復配列遺伝子であるPc-3遺伝子の次世代での変異の検出では、反復配列遺伝子鎖長に若干変化が認めらたものの、投与群と対照群の間に有意な差は現在の所認められていない。 以上の結果からダイオキシンの生殖行動、生殖能への影響、そして精子を介した次世代への形態的(催奇形性)および機能的(仮死など)影響が強く示唆されが、そのメカニズムの解明には至っていない。
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