研究課題/領域番号 |
12836007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野崎 正美 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (30189394)
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研究分担者 |
田中 宏光 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (10263310)
西宗 義武 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80029793)
堂前 嘉代子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助教授 (80127266)
蓬田 健太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (90283803)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | 精巣 / 生殖細胞 / 半数体 / Bisphenol A / 前立腺 / Gene expression / Haploid germ cells |
研究概要 |
内分泌撹乱物質の生殖細胞に及ぼす影響を半数体精子細胞特異的遺伝子群の発現レベル(短期的影響)及び精子形成障害(長期的影響)を指標として明らかにすることを目的として研究を行った。食品容器に多用されるプラスチック製品のポリカーボネイトの原料であるBisphenol Aにエストロジェン作用のあることが判明していることから、本研究においては内分泌撹乱物質としてBisphenol Aを用いて、生殖細胞に及ぼす影響を調べた。 1.短期的影響 成熟精巣と未成熟精巣それぞれから抽出したmRNAを用いてサブトラクテッドcDNAライブラリーを作成し、半数体特異的遺伝子を85種類クローニングした。そのうち約25%は既知であり、それ以外は未知の新規遺伝子であった。それぞれの遺伝子について、ノーザンハイブリダイゼイションによって精巣半数体特異的発現を確認した。今後はこれら精巣生殖細胞特異的遺伝子群の発現変調について、マイクロアレイ等を用いて、Bisphenol Aの影響を明らかにする。 2.長期的影響 (1)雄に対する直接的な影響 未成熟マウス(4週齢)に極微量(200ng/kg/day)のBisphenol Aを週3回、6週間経口投与した後、20週齢まで経時的に観察した。その間、生殖器官重量および肉眼的観察による変化は認められず、妊孕性に異常はなかった。しかし組織観察により、精細管内精細胞の剥落や壊死塊等の変化が認められた。この結果は、幼若期から一定期間連続的に微量のBisphenol A経口摂取により、精細胞に障害が現れたことを示す。大部分の精細胞は正常であり、妊孕性もあることから、障害は軽いとはいえ、食器等からも溶出しうる物質によって現れた影響は無視できない。今後、作用機作も含めて、詳細な解析を続けていく。 (2)母親を通じた間接的な影響 4週齢雌マウスに極微量(200ng/kg/day)のBisphenol Aを週3回、6週間経口投与した後、交配し、さらに投与を継続し、得られた新生仔の臓器重量測定及び、各臓器の肉眼観察を行った。その結果、多くの個体で精巣だけに著しいサイズの減少が見られた。これらの異常精巣の組織観察を行ったところ、その一部は精細胞分化障害により精子形成が完全に阻害されており、多くは部分的障害を呈していた。さらにこれらの新生仔個体では10週齢まで、前立腺重量増加が顕著であった。これらの結果は雌個体に摂取された極微量の内分泌撹乱物質が受胎後、胎盤を通して雄個体に影響を与え、新生仔の精子形成阻害および、前立腺細胞増殖異常を起こした可能性を示している。母胎を通じた子供への化学物質の影響についてさらに解析を進めていく。
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