1.研究目的 外因性内分泌かく乱物資の哺乳類生殖機能への影響を評価する目的で、出生直後のアンドロゲン投与で連続発情(PE)ラットを作出した。このラットに妊卵着床前のホルモン環境を人工的に設定して、子宮内膜の性ホルモン受容体発現ならびに成長因子(EGFとTGF-α)とその受容体発現の変化を免疫組織学に追究し、内分泌かく乱物質の子宮における評価指標の検討を行った.更にその指標を用いて、bisphenol-A(BPA)のラット子宮に及ぼす影響を評価した. 2.結果 (1)PEラットにおける性ホルモン受容体と成長因子の変化 正常ラット子宮上皮およぴ間質のPR発現は、P投与3日後に低下するが、投与3日目にE2を加えると、発現が回復した。これに対してPEラットでは、PR発現が低下しており、E2により上皮のPR発現が殆ど消失した。また、正常ラット子宮上皮のER発現は3回のP投与により消失したが、PEラツト子宮上皮では発現は殆ど抑制されなかった.成長因子(EGF、TGF-α)とその受容体(EGF-R)発現は、妊娠前期の環境を模した種々の性ホルモン投与に対して大きな変動を示さなかった。 (2)周生期BPA投与の子宮への影響 出生日から7日間BPA投与を投与したラットは、正常な性周期を示し、性熟後に摘出した卵巣中には、濾胞と黄体を認めた。しかし、卵巣重量は、0.1およびmg投与群で有意に減少し、子宮は、逆にこれらのBPA投与群で有意増加していた.PRおよぴER発現に変化は各ホルモン処理後に僅かな変化が認められたが、着床日を模したホルモン処理に対して、対照群と類似した性ホルモン受容体発現を示した。 3.結論 (1)連続発情ラットの子宮は、上皮および間質細胞のホルモン依存性受容体発現が変化し、これが性ホルモンに対する内膜細胞の増殖活性に反映したと考えられる。子宮における内分泌かく乱物質の影響を評価する上で、性ホルモン受容体発現の検索は有用である。 (2)周生期のBPA処理は、視床下部-下垂体系の雄化誘導には到らなかったが、成熟後の卵巣および子宮重量に影響した。しかし、これらのラットの性ホルモンに対する子宮内膜の反応性は、正常ラットに近く、検索した生後60日齢における周生期BPA処理の持続効果は少ないと結論される。
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