研究概要 |
中枢神経機能に及ぼす2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-P-ジオキシン(TCDD)の影響をより直接的にかつ定量性をもって検討するために、まず、SD系ラットの新生仔(生後10日目)の脳室内に脳定位固定装置を用いて、TCDD 20ng/2μlを2分間かけて注入し、1分間そのまま針を留置することにより微量注入した。対照群には、同量の溶媒を脳室内に投与した。測定は、生後4週齢より12週齢にかけて隔週ごとに摂食・飲水・運動活性測定装置に入れ、経時的に各パラメーターを測定した。結果は雌雄別に解析した。いずれも、統計学的に有意な差は認められなかった。次に、成体の雄性SDラットを用いて、TCDD 100ng/2μlおよびノニルフェノール(NP)2μg/2μlを脳室内に投与した。TCDD投与群では、投与前値に比較して、有意な運動量の増加が認められたが、溶媒投与群においても同様の傾向が認められ、一概にTCDDの作用とは言いがたい。摂食・飲水には影響は認められなかった。NP投与による影響はいずれのパラメーターについても認められなかった。放射状迷路装置を用いてラットの学習・記憶に及ぼすTCDDおよびNpの影響を調べた結果、いずれも有意な影響は認められなかった。さらに、オープン・フィールド装置を用いてラットの情動行動に及ぼすTCDDおよびNPの影響を調べた結果、TCDD投与群において、やや情動性の低下傾向が認められたが、統計学的に有意な差は認められなかった。NPについてはなんら影響は認められなかった。以上より、NP2μgを脳室内に投与しても、ラットの中枢神経機能について影響は認められなかったが、TCDDに関しては、さらに詳細な検討が必要と考えられる。
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