研究課題/領域番号 |
12836012
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
水光 正仁 宮崎大学, 農学部, 教授 (00128357)
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研究分担者 |
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 助手 (90295197)
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キーワード | 硫酸化 / 硫酸転移酵素 / ビスフェノールA / 内分泌かく乱物質 / 環境ホルモン / トリブチルスズ / エストロゲン作用 / イソフラボン |
研究概要 |
近年、エストロゲン様作用を示す化合物が多方面から注目されている。イソフラボンは女性の更年期障害や骨粗鬆症の改善効果、またトリブチルスズ(TBT)やビスフェノールA(BPA)は内分泌かく乱物質として生体内のホルモンバランスを乱している等の報告がある。従来これらの物質のエストロゲン様作用は、エストロゲンの構造との類似によりエストロゲン受容体とこれらの物質が結合するためと考えられていた。今年度の研究では、ステロイドホルモン類の体内濃度調節に関与している硫酸化について、これらの化合物の選択的あるいは競争的なエストロゲン硫酸化の阻害による生体内濃度に与える影響と新たな作用機構について検討した。イソフラボン類、TBTおよびBPAの硫酸化は、主に解毒代謝を行う酵素であるP型フェノール硫酸転移酵素(SULT1A1)、M型フェノール硫酸転移酵素(SULT1A3)、エストロゲンの硫酸化を主に行うエストロゲン硫酸転移酵素(SULT1E1)を使用し検討を行った。 その結果、イソフラボン類は効率よく硫酸化され、BPAも硫酸化された。TBTだけは硫酸化されなかった。イソフラボンのKm値はダイゼインとグリシテインでそれぞれ1.28μMと0.22μMであった。競合試験の結果、これらの化合物はエストロゲンの硫酸化を阻害した。SULT1E1では阻害率50%を示す値であるIC50はβ-エストラジオール0.1μMに対してダイゼインは8μM、グリシテインは1.5μMとなった。これらの化合物はエストロゲンの硫酸化を競争的あるいは選択的に阻害し、その結果イソフラボンはエストロゲンの体内濃度を上昇させ女性の更年期障害や骨粗鬆症の改善をすることが示唆された。一方TBTやBPAなどの内分泌かく乱物質は硫酸化によりエストロゲンの代謝を阻害しエストロゲンの体内濃度を上昇させ内分泌かく乱作用を起こしている可能性が考えられた。
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