研究概要 |
(1)生殖機能の調節を担うGnRHおよび各種下垂体・性腺ホルモンの非RI固相2ステップ法による免疫測定法を確立し,微量同一試料の多重測定を可能にした. (2)ICR雄マウス新生子に人工的な女性ホルモンとして最も力価の強いジエチルスチルベストエロール(DES)を生後3日こ各群0.001,0.01,0.1,1.0,10.0μg単回投与した結果,組織学的にDES10μg投与で精細管内の各細胞の核萎縮,細胞質内の空胞化および細胞間隙の増大,細胞密度の低下,精祖細胞〜精子細胞の減少がみられ,成熟精子は観察されなかった. (3)DNAの構成塩基の一つであるthymidineの誘導体である5-bromodeoxyuridine(BrdU)を人工的に取り込ませ,スコアリング法を導入して生殖腺細胞の分化・増殖能評価法を確立した. (4)BrdU取り込み実験により精細管の細胞の分化・増殖能抑制が認められた. (5)内分泌学的には,精巣および下垂体のホルモン分泌の抑制,視床下部性の機能低下が示唆された. (6)GnRHおよびエストロジェン受容体(αおよびβ)の免疫組織化学的検索では,DES投与各群で対照群との顕著な差異を認めることはできなかった. (7)DES10μgより低濃度単回投与では,肉眼的,組織学的には明らかな影響は認められなかったが,内分泌学的には濃度依存的な影響がみられた. (8)雌マウスでは,DES濃度に依存して生殖腺の発育抑制,血漿中FSHの増加,性腺中インヒビンの減少が認められた. (9)DESは下垂体中LHおよびFSHを減少させ,かつ,脳-下垂体-性腺系フィードバック機構を破綻させることが示唆された.
|