研究概要 |
本研究では、ATP依存性のMDR/P糖蛋白質およびcMORTに焦点を絞り、コプラナ-PCBsの体外排泄に関与するATP依存性のMDR/P糖蛋白質およびcMORTの遺伝子の検出を目的とした。初めに従来から我々が用いているLLC-PK1および様々なヒトMDR変異体遺伝子を導入した細胞株におけるコプラナ-PCBsの輸送排泄能を単層培養細胞輸送ポンプ測定系を用いて検討したところ、Vinblastin,Cortisol,Estradiolなどの基質特異的な排泄輸送を示すヒトMDR変異体遺伝子導入細胞株間でのバリエーションは得られたが、本研究に使用したコプラナ-PCBsの異性体の一つである3,3',4,4'-tetrachlorobiphenyl(TeCB)に対するMDRによる能動的な輸送は認められず、細胞内に蓄積するだけであった。そこで、MDRの6つの膜貫通蛋白部位のうち、分子量による輸送を制御していると言われているN末端61番目のヒスチジンのアミノ酸置換体をヒト口腔癌細胞であるKB細胞に遺伝子導入し、MDR変異体を作製後Vinblastin,Colchicine,Cortisol,Estradiol,TeCBなどの蓄積能を検討した。それぞれの変異体により野性株であるHis61に比較し、MDR変異株間でのVinblastin,Colchicine,Cortisol,Estradiolの蓄積量に促進および抑制効果が認められたが、TeCBでは野性株、変異株ともに高い蓄積を示すだけであった。Vinblastin,Colchicine,Cortisol,Estradiolの排泄がMDR依存性であることを確認するために、verapamilおよびcyclosporinAによる阻害実験を実施する過程において、TeCBのMDR阻害能も検討したところ、TeCBはMDR阻害剤であるverapamilおよびcyclosporinA同様Vinblastin,ColchicineのMDR発現KB細胞での排泄を阻害した。現在、KB細胞で用いたN末端61番目のヒスチジンのアミノ酸置換体遺伝子を単層培養細胞輸送ポンプ測定系に用いたLLC-PK1細胞に遺伝子導入し、MDR変異体発現LLC-PK1を作製し、輸送能を検討中である。今後、さらに樹立されている癌細胞株からのMDR遺伝子のクローニングも併せて検討していく予定である。
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