研究課題/領域番号 |
12836016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
池田 輝雄 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (60151297)
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研究分担者 |
柏崎 直巳 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (90298232)
猪股 智夫 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (10147978)
代田 欣二 麻布大学, 生物科学総合研究所, 教授 (70147974)
森田 英利 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (70257294)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | P-糖タンパク質 / LLC-PK1 / クローニング / コプラナーPCBs / 膜輸送 / 薬物ポンプ |
研究概要 |
内分泌かく乱物質である性ホルモン類似化学物質やアリルハイドロ受容体(AhR)やエストロゲン受容体に対する非生体物質は、多くの生体にとって有害な反応に関係することが知られてきている。我々は、ヒトMDR1遺伝子を発現ベクターにクローニングし、ブタ腎上皮細胞(LLC-PK1)に導入してMDR1を安定的に発現した単層細胞(LLC-COL)培養系を用いて、ステロイド系物質であるコルチゾールおよびエストロジェン、AhRのリガンドでありコプラナーPCB異性体のひとつである3,3',4,4'テトラクロロビフェニール(TeCB)の膜輸送および細胞内蓄積を検討した。コルチゾールの基底側から頭頂側への正味の輸送はビンブラスチン同様、LLC-PK1に比較して、LLC-COLでは増加していたが、エストラジオールの輸送は両方向とも見られなかった。エストラジオールの拡散輸送は両方向ともコルチゾールに比べて高く、細胞内蓄積もコルチゾールに比べて大きかった。TeCBの膜輸送は非常に低く、正味の基底側から頭頂側への輸送も見られなかったが、細胞内蓄積は高かった。細胞内蓄積は、高濃度においてLLC-PK1よりLLC-COLで僅かに高かった。 ヒトP糖タンパク質の61番目のヒスチジン(H61)がフェニールアラニン(F)に置換されると低分子の薬剤に対する抵抗性が増加すること、あるいはセリン(S)に置換すると高分子の薬剤に対する抵抗性が増加することがすでに報告されている。そこで、これらの遺伝子をヒトがん細胞であるKB-3に導入し、MDR1を発現させた細胞を用いて、ビンブラスチン、コルヒチン、TeCBの細胞内蓄積を検討した。ビンブラスチンおよびコルヒチンの細胞内蓄積は、P糖タンパク質導入細胞において著しく減少した。しかしながら、TeCBでは細胞内蓄積の減少はいずれの細胞においても見られなかった。P糖タンパク質を発現する細胞の細胞内蓄積の減少は、P糖タンパク質の阻害剤であるベラパミルによって阻害された。同様な阻害は、TeCBによる処理によっても認められた。それゆえ、TeCBはP糖タンパク質によって排泄されるのではなく、かえってP糖タンパク質を阻害し、薬物の膜輸送に影響を及ぼすことが示唆された。 さらに、犬の癌由来の細胞株数株から、MDR1を生化学的および遺伝学的に証明し、薬物輸送を検討しているが、現在までにコプラナーPCBsを輸送するMDR1のクローニングはされていない。今後は、P糖タンパク質以外のトランプポーター例えばABCタンパク質などを標的をしてコプラナーPCBs輸送可能な遺伝子のクローニングを試みる。
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