研究課題/領域番号 |
12837002
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 展彰 筑波大学, 社会医学系, 講師 (10251068)
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研究分担者 |
妹尾 栄一 東京都精神医学総合研究所, 社会病理, 副参事
佐藤 親次 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (90162437)
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キーワード | 薬物依存症 / 社会復帰施設 / ASI / SDS / PANSS / 心理学的指標 / 認知機能検査 / MRI |
研究概要 |
本研究は慢性薬物乱用者の神経心理学的障害を評価すると共に、心理・社会的側面およびスピリチュアリティを評価し、薬物使用状況と三側面の関連を検討することを目的に行った。 対象者は、茨城県下の薬物依存症社会復帰施設・茨城DARCに入所していた男性33名。平均年齢30.4歳、平均薬物使用期間120ヶ月、平均断薬期間4.5ヶ月、平均ダルク入所回数1.9回であった。乱用薬物は覚醒剤70%、有機溶剤70%、その他36%であった。 断薬期間による比較を行った。断薬期間1ヶ月未満、1〜3ヶ月未満、3ヶ月以上の3群に分類。神経心理学的指標については、ベントン視覚記銘検査正解数、語流暢性検査に有意差が見られ、ウイスコンシンカードソーティングテストでは有意な差は認めなかった。ベントン視覚記銘検査で測定されるような記憶という要素的な下位機能は比較的早期に回復し、次により上位の脳機能・流暢性が回復していくという時系列的変化があると推測され、ウイスコンシンカードソーティングテストで測定されるような「概念の転換の障害」の回復にはさらに時間を要すると考えられた。また心理・社会的指標とスピリチュアリティにおいては、気分プロフィール検査(POMS)のバイタリティ、Purpose in Life Test(PIL)に有意差が見られ、断薬期間が長い群の方が、バイタリティ・スピリチュアリティが低いという結果であった。以上より、視覚性の記憶や流暢性などの認知機能の回復は早期に起こり、それに伴い主観的な心理状態や底つき感、空虚感への自覚が生まれる。しかし嗜癖行動から脱却するために重要と思われる概念や行動の転換・修正などの遂行機能や自らの生き方に関する意識や構えといったスピリチュアリティの回復には時間を要すると考えられた。今後は対象者を縦断面で評価し、これら断薬期間と3側面への影響についてさらに検討する予定である。
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