研究課題/領域番号 |
12837002
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 展彰 筑波大学, 社会医学系, 講師 (10251068)
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研究分担者 |
妹尾 栄一 東京精神医学総合研究所, 社会病理, 副参事
佐藤 親次 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (90162437)
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キーワード | 薬物依存症 / 社会復帰施設 / スピリチュアリティ / DARC / PANSS / 心理学的指標 / 認知機能検査 / 治療共同体 |
研究概要 |
(目的)薬物依存者の障害および回復過程を、神経心理学、心理学、スピリチュアルの3側面から評価し、治療プログラムについて検討を行った。 (対象と方法)薬物依存症社会復帰施設に入所中の薬物依存者51名と対象とし、薬物乱用状況、心理学尺度(陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、気分プロフイール尺度(POMS)、依存重症度尺度(SDS))、神経心理学検査(ウイスコンシンカード分類テスト(WCST)、語流暢性検査(VFT)、ベントン視覚記銘検査(BVRT))、スピリチュアリティ(PILテスト)を施行した。 (結果)対象者の平均年齢は30.4±8.2歳、平均断薬期間は5.0±6.2ヶ月、平均乱用期間は9.6±5.6年であった。主な乱用薬物は、覚醒剤が53%、有機溶剤が47%であった。心理学的側面については、抑うつや混乱が強いという結果を示した。また対象者の25%が陽性症状を有していた。神経心理学的側面では、検査項目全てにおいて平均以下の成績を示した。PILテストにおいても非常に低い値を示した。対象者を有機溶剤乱用群と覚醒剤乱用群の比較では、BVRTで有意差を認めた。断薬期間による比較では、断薬2〜9ヶ月の群は2ヶ月以下の群に比べ、有意に抑うつ感・疲労感が高く、活気は低下していた。前頭葉機能を示すVFTは断薬期間が長い群の方が成績が高い傾向を認めた。 (考察)対象者は心理的には不安、抑鬱感が強く、陽性症状を持つ者が4分の一を占め、精神医学的なケアを必要な群であることが確認された。また前頭機能やスピリチュアリティの著しい低下を認め、これは特に有機溶剤乱用者に前頭葉機能低下が強かった。断薬後は、認知機能は一直線に回復していくが、心理学的には2-9ヶ月に一旦抑鬱感が増大する期間があること、スピリチュアリティの回復にはより長い時間がかかること等が判明した。こうした経過に合わせたプログラムを組むことが必要であると考えられた。
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