研究分担者 |
小宮 信夫 立正大学, 文学部, 助教授 (60339603)
辰野 文理 常磐大学, 国際学部, 専任講師 (60285749)
細井 洋子 東洋大学, 社会学部, 教授 (80073633)
富田 信穂 常磐大学, 人間科学部, 教授 (60105062)
津富 宏 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教授 (50347382)
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研究概要 |
表題にある「被害者・家族等の参加による」とは修復司法のプログラム(以下RJと略す)のことを指す。これは犯罪・非行の被害者,加害者少年,その家族・地域の関係者が集まり,胸襟を開いて会話協議して,「不正義の訴えを相互に聞き届け,自己の存在性を確証した」という感情に基づいて人と人とのあいだに調和を取り戻すところの,犯罪・非行への対処法である。少年司法機関に継続している少年にRJを実施するならば,再非行防止に向けての支援が当面の目標になる。しかし,第一に考えるべきは被害者のニーズの充足であり,被害者が再非行防止の道具にされてはならない。この対処法は従来型の保護処分,刑事処分の精神や実務と異なる。 RJは,現時点では日本の少年司法では公的に制度化されていないし,地域社会における私的なプログラムも希少である。そのなかで,本研究は数少ない実践を事例研究として報告した。また,RJの実際のビデオを非行の少年,少年司法の職員,大学生に見せて再非行防止の効果について判断させたが,圧倒的大多数は効果に肯定的であった。ビデオを見せないで行った市民に対する意識調査でも,意見保留者が3割いる点に留意して否定に対し3倍強が肯定的に答えた。 数多の研究によれば,非行は,外的,内的,多重の要因で起こる複合体である。再非行もそうであると考えられる。ゆえに修復司法を,1〜3回の会話協議により非行が直ちに止まる即効薬とみなすのは誤りである。RJが再非行の防止になる理論的根拠は,ブレイスウェートによれば,1)再統合の恥つけ理論,2)手続きの進め方の正義の理論,3)恥の情動理論,4)反抗・軽蔑の低減理論である。つまり少年にとって外部の権威による防止強制の心的機制を想定するのではなく,会話協議の過程での防止に向けての少年の内発的動機づけを期待するのが特徴である。今後,多くのサンプルにRJを実施した上で実施しないサンプルとの比較分析,多くの事例について再非行に関する追跡研究が望まれる。
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