本研究は、愛知県と静岡県における来日外国人少年の保護観察、特に日系ブラジル人少年の保護観察に焦点を当てた調査研究である。 愛知県に関しては、2000年に来日外国人少年の保護観察を担当していた保護司21人へインタビュー調査を行った。静岡県に関しては、2001年に浜松市を中心とする地域でブラジル人少年に対する保護観察を比較的最近に終了した保護司11人へのインタビュー調査を行った。調査にあたっては性差に配慮し、金城学院大学大学院の女子大学院生2名と共同でインタビューした。 保護司のブラジル人少年保護観察対象少年に対する認識は、地域によって、また担当したケースによって大きく異なることが分かった。たとえば少年との面接の確保については、愛知県と異なり、静岡県西部では日本人少年よりも容易で来訪の時間も守られるとの見解も多かった。愛知県では、女性保護司が往訪をためらうような地域環境も出現していた。 言葉に関して、日本語がカタコトの少年の場合は、対象者の家族や親族、勤務関係者が通訳となっていた。言葉が通じない状況下では保護司にとって深い指導を行うのは容易ではないように思われた。ポルトガル語が話せる保護司は3名いた。 所在の確認や保護観察制度の理解をえるといった基本的な点で保護司は苦労していた。これは、人材派遣会社を通じての就労が不安定であったり、ブラジル人のネットワークによって全国を移動したりするためであり、わが国では犯罪であるが治安のよくないブラジルでは問題にならない行為もあり、罪障感が乏しいのも特徴であった。 家族のメンバーの絆は日本人よりも強いが、他方で離婚や内縁などで人間関係が狭い範囲で複雑化していたり、両親とも収入を得ることを来日の第一日的としており、さまざまな障害も生まれていた。
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