研究概要 |
本年度は、プロセス雰囲気を徹底的にクリーン化し、さらにプラズマからのイオン照射を行いながら薄膜形成を行うことにより、高品質STNO(Sr_2(Ta_<1-x>,Nb_x)_2O_7)強誘電体膜を500℃以下の非常に低い温度(通常は800℃程度の温度が必要)で形成可能な成膜装置を世界に先駆けて開発した。さらに、強電体膜を形成した後に、高密度マイクロ波プラズマを用いて生成した酸素ラジカルで処理することにより強誘電体膜の電気的特性を改善する技術、および強誘電体膜に対して完全なバリア性を有する高信頼性シリコン窒化膜をシリコン基板上に形成する技術を開発した。予算の都合上、強誘電体膜形成装置は、既存の超高清浄シリコンエピタキシャル低温形成装置を大幅な改造を行うことにより実現した。プラズマ装置本体は完成し、現在ストロンチウム、ニオブ、およびタンタルを含む有機金属ガスの供給系を開発、作成中である。高密度マイクロ波プラズマを用いて生成した酸素ラジカルを用いて高誘電絶縁膜であるTa_2O_5の低温加熱処理を行った結果、リーク電流の大幅な低減と界面特性の向上が見られた。本研究で開発したTa_2O_5に対する酸素ラジカル処理は、STNO強誘電体膜に対しても十分効果が発揮されることが期待される。強誘電体膜のバリア膜としてのシリコン窒化膜は、NH_3/Ar高密度マイクロ波プラズマでNHラジカルを大量に生成し、この中にシリコン基板を設置して低温(400℃)でシリコン表面を窒化することにより形成した。形成したシリコン窒化膜は2nmと非常に薄くても、金属などの原子に対して完全なバリア性を有することが明らかになった。シリコン酸化膜として圧倒的にバリア性が高い上、誘電率が倍程度もあるため、強誘電体の特性を十分生かした高い電流駆動能力をもったデバイスが実現できる。さらに、界面準位密度は現在主流の熱酸化膜と同程度であり、これまで報告されていたどのシリコン窒化膜よりも低い。この様に、STNO強誘電体膜に対して理想的なバリア膜が実現された。
|