超高速極微量全血分析のためのヘルスケアチップ研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12838011
• 研究機関: 東洋大学
• 研究代表者: 一木 隆範 東洋大学, 工学部, 助教授 (20277362)
• 研究分担者: 堀池 靖浩 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20209274)
• キーワード: ヘルスケアチップ / 血液分析 / マイクロキャピラリー電気泳動 / ディープエッチング / ガラスエッチング / Crドライエッチング / 細胞免疫電気泳動 / 誘電泳動力

研究概要

極微量全血から人間の健康状態を高速診断するヘルスケアデバイス実現のため、半導体加工技術を応用したバイオチップ加工技術を開発し、更に、全血試料の前処理から血球分析や免疫分析までをチップ上で行うために必要な要素技術を研究した。バイオチップ加工技術に関しては従来数μmの加工のために開発されてきたプラズマエッチング技術を数10μm級の深さのマイクロ流体素子の作製に適用するために、塩素負イオンプラズマを用いたCrマスクドライエッチング技術とC_4F_8/SF_6系高密度プラズマを用いた高速高選択比ディープ石英エッチング技術を開発した。また、より安価な基板材料であるPYREXガラスについても高密度フッ素系プラズマを用いれば、垂直形状が可能であることを示した。これらの独自技術を駆使して血液細胞のオンチップ分離・分析マイクロチップの試作を行った。マイクロ遠心チップでは0.15μlの微量全血を5000rpmで1分間回転させて遠心力によって血液細胞と血清成分に分離し、低いレイノルズ数を有する微小空間では液体の流れが層流になる特性を利用して容易に血球が分取できることを示した。また、微小埋め込み白金電極アレイを有するマイクロキャピラリーチップを試作し、誘電体に交番電界を印加すると生じる誘電泳動力を利用して血球のサイズフィルタや濃縮などが可能なことを実証した。更に誘電泳動力を利用して特定の細胞を分取することが可能なセルソーターチップを試作するなど、全血試料の種々の前処理をオンチップで実現した。また、オンチップ細胞免疫電気泳動による細胞の免疫性の高速タイピングを提案し、実際に羊赤血球とその抗体たんぱくであるIgGをマイクロキャピラリー電気泳動チップ上で対向泳動させると羊赤血球表面の電荷の変化により細胞の泳動速度が大きく変化し、この変化を検出することにより免疫反応の高速検出が可能であることを示した。

研究成果

• [文献書誌] T.Ujiie: "Fabrication of quartz microcapillary electrophoresis chips using plasma etching"Jpn.J.Appl.Phys.. 39. 3677-3682 (2000)
• [文献書誌] T.Ichiki: "Precise chrome etching in downstream chlorine plasmas with electron depletion throuogh negative ion production"J.Electrochem.Soc.. 147. 4289-4293 (2000)
• [文献書誌] T.Ichiki: "Immuno-electrophoresis of blood cells on micro-capillary chips"Micro Total Analysis Systems 2000 (eds.A.van den Berg et al., Kluwer Academic Publishers, Netherland) . 119-122 (2000)
• [文献書誌] A.Oki,: "Glucose measurement in blood serum injected by electroosmosis into phospholipid polymer coated microcapillary"Micro Total Analysis Systems 2000, (eds.A.van den Berg et al., Kluwer Academic Publishers, Netherland) . 403-406 (2000)
• [文献書誌] T.Ujiie: "Microfabricated separator and manipulator of blood cells for health care devices"Digest of papers 2000 Int.Microprocesses and Nanotechnology Conf.. 28-29 (2000)
• [文献書誌] A.Oki: "Development of elemental technologies for fabricating the health care chip"Digest of papers 2000 Int.Microprocesses and Nanotechnology Conf.. 70-71 (2000)
• [文献書誌] A.Oki: "Electroosmosis injection of blood serum into biocompatible microcapillary chip fabricated on quartz plate"Electrophoresis. 22. 341-347 (2001)
• [文献書誌] 堀池靖浩: "日々の健康管理-ヘルスケアデバイスの創製-"高分子. 49巻. 652-655 (2000)
• [文献書誌] T.Ichiki: "Microfabrication technology for healthcare chips"Abstr.First Int.Conf.on Molecular Electronics and Bioelectronics. 174-175 (2001)